第8回:データの前処理と特徴エンジニアリング
1. データ前処理の重要性
データ前処理は、データの品質を高め、モデルの精度向上に寄与する重要なステップです。前処理を適切に行うことで、データのノイズを減らし、分析や学習の信頼性が向上します。
データ前処理の主なステップ
- スケーリング(標準化・正規化):データの範囲を統一し、アルゴリズムの収束を早めます。
- 欠損値補完:欠損データを補完する方法で、平均値、中央値、または特定のアルゴリズムで補完します。
- 外れ値処理:極端な値を除去または修正し、モデルの影響を最小限に抑えます。
- エンコーディング:カテゴリデータを数値データに変換する方法で、代表的な手法にワンホットエンコーディングがあります。
2. スケーリングと正規化
標準化(Standardization)
標準化は、データを平均0、分散1に変換する手法で、SVMや線形回帰に適しています。標準化することで、異なる特徴量が均一に扱われるようになります。
正規化(Normalization)
正規化は、データを0〜1の範囲に変換する手法です。ニューラルネットワークでよく使用され、勾配消失問題の緩和に役立ちます。
3. 欠損値処理
欠損値の補完方法
欠損値は、データが抜けている部分で、モデルの精度を低下させる可能性があります。補完には以下の方法があります。
- 平均値や中央値で補完:単純な方法で、データの偏りが少ない場合に有効です。
- 近傍値による補完(k-近傍法):欠損値が少ない場合に、近いデータの値で補完します。
- 予測モデルを使用した補完:欠損値を予測するためのモデルを使用し、精度を向上させます。
4. 特徴エンジニアリング
特徴エンジニアリングは、データから有用な特徴量を抽出し、モデルの精度を向上させる手法です。以下は代表的なアプローチです。
特徴量の抽出と生成
- 集約特徴量:複数のデータをまとめた集約値(例:月間売上平均)。
- 多項式特徴量:複数の特徴量を組み合わせて生成(例:二次項、交互作用項)。
- 時間情報の追加:日付データから曜日や月などの特徴量を生成。
次元削減
高次元データを低次元に変換することで、モデルの計算コストを減らし、解釈しやすくします。代表的な手法には以下のものがあります。
- 主成分分析(PCA):データの分散を最大限に保持する少数の軸に変換。
- t-SNE:データの高次元構造を2次元や3次元で視覚化するための非線形手法。
5. データバイアスとその対策
データバイアスの影響
データバイアスは、データに偏りがあることを指し、モデルの公平性や信頼性に影響を与えます。AIの倫理的な側面からも重要な課題です。
バイアスの対策方法
- データ収集の多様性:さまざまな属性を持つデータを収集し、偏りを減らします。
- 公平性指標の導入:モデルが特定のグループに対して公平に機能するかを評価。
- データリバランシング:少数クラスのデータを増やすことで、偏りを補正します。
次回予告
次回は、AIの応用事例と産業別ユースケースについて学び、医療や製造業など具体的な分野でのAI活用事例を深掘りします。