近年、生成AIの急速な進化により、「AIに仕事を奪われる」という懸念が現実になりつつあります。特に、アメリカではプログラマーの雇用数が過去2年間で27.5%も減少し、1980年代の水準にまで落ち込んでいるというデータも出ています。これは、AIの影響を最も強く受けた職種の一つであり、プログラミングを学ぶ意義そのものが問われ始めています。
なぜプログラマーの数が急減しているのか?
その背景には、コード生成AIの台頭があります。Googleのスンダー・ピチャイCEOは、現在グーグルで新たに導入されるコードの4分の1以上がAIによって書かれていると明かしました。
また、開発者向けサイト「スタックオーバーフロー」の調査では、62%の開発者がすでに日常的にAIツールを使っていると回答しています。
減少する「プログラマー」、残る「ソフトウェア開発者」
ただし、全てのIT職種が同じように影響を受けているわけではありません。アメリカ労働統計局のデータによれば、「プログラマー」の雇用は激減している一方で、「ソフトウェア開発者」の雇用はわずか0.3%の減少にとどまっています。
- プログラマー:既存の仕様に従ってコードを書く職種
- ソフトウェア開発者:顧客ニーズを把握し、全体の設計・実装を主導する職種
AIが代替しやすいのは、定型的で単純なコーディング作業。逆に、設計力や問題解決力など高度なスキルが求められる職種は今後も重要とされそうです。
「もはやコーディングは不要?」という極論も登場
Replit社のCEO、アムジャド・マサド氏は「もはやコーディングを学ぶべきではない」と発言し、議論を呼びました。彼は将来的にほとんどのコードはAIが自動生成するようになると予測しています。
ただし、マサド氏はコーディングスキルが完全に不要になるとは言っていません。むしろ今後は、AIに**適切な指示を出す力(プロンプト設計)**や、問題を整理し論理的に考える力が求められるとしています。
「素人でもアプリが作れる」時代の到来
AIを活用すれば、プログラミング知識がなくてもアプリやツールが作れる時代になってきました。これを「バイブコーディング(vibe coding)」と呼び、文章で指示を出すだけで動くコードをAIが書いてくれるのです。
実際、米ニューヨーク・タイムズの記者はプログラミング未経験にもかかわらず、AIを使って実用的なツールを自作したといいます。
これから求められる力とは?
今後、AIの普及によって変わるのは「仕事の中身」であり、「すべての仕事が奪われるわけではない」という見方も根強いです。AIはあくまでツール。人間はそれをどう活かすかが問われています。
- 単純作業はAIに任せ、創造的な設計や改善に集中
- **AIと協働するスキル(プロンプト設計や構想力)**を育てる
- 他者と協力しながら価値を生み出すコミュニケーション能力
こうしたスキルが、今後ますます重要になるでしょう。
まとめ:プログラミングを学ぶべきか?
「コードを書く力」だけでは、AIに代替される可能性は高まっています。しかし、プログラミングを通じて身につく論理的思考や問題解決能力、AIへの指示力は、これからの時代にこそ役立つスキルです。
「何を学ぶか」以上に、「どのように活用するか」が問われる時代が、すでに始まっています。